二 つ

議員の仕事は予算と条例の 2 つしかない

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数字で見る議会機能停止

地方議員の仕事は、突き詰めると「予算を決めること」と「条例を作ること」の 2 つだけです。ところがその一方、条例づくりが日本の地方議会で事実上機能停止しています。

全国平均
2〜3%

議員提案による政策条例の割合(残り97〜98%は行政側提案)

札幌 第32期
0

議員68名で4年間の議員提案政策条例

シアトル
22〜44

議員1人あたりの年間条例提案数

立法力の差
100倍以上

シアトル 対 札幌、議員1人あたり比較

議員の仕事は 2 つしかない

地方自治体で問題が起きても、なぜ解決されないのか。答えは制度ではなく、議員の質と馴れ合いにあります。

1
予算を決める

市民のお金の使い道を承認・修正・否決する。執行機関である市長部局の編成案を、住民の代表として点検する役割です。

2
条例を作る

市民の生活を縛る・守るルールを立法する。住民に直接公選された議員にしかできない、もう一つの中核業務です。

本ページの結論

足りないのは制度ではなく、議員の質と覚悟。そして、それを選ぶ有権者の目です。

札幌市議会では現任期 4 年間で議員提案の政策条例がゼロでした。これは札幌だけの問題ではなく、全国の地方議会に共通する構造問題です。本ページでは、現状・国際比較・解決策の 3 点を整理します。

日本の地方議会の現状

議員提案条例の割合

全国市議会議長会の調査によれば、地方議会で成立する条例のうち、議員提案による政策条例は 2〜3% にとどまります。残り 97〜98% は市長部局(行政側)が提案したものです。

提案者 全条例に占める割合
市長(執行機関)約 97〜98%
議員約 2〜3%
委員会1% 未満

つまり、議会は二元代表制の一翼でありながら、実態は 行政提案の承認機関 になっています。

札幌市議会の例:第32期 4年間で議員提案政策条例ゼロ

札幌市議会公式の「議員提案の政策条例」ページに登載されている最新条例は、第31期の歯科口腔保健推進条例(2022年6月)です。第32期(2023年5月〜2027年4月)の新規登載はゼロ。議員 68名で 4 年間ゼロというのは、議員 1人あたりに換算すると年間 0 本です。

予算審議の形骸化

予算審議でも、議員の役割は形骸化しています。

これは札幌だけでなく、政令市 20 市の大半に共通します。

馴れ合いの構造

なぜ議会が機能停止しているのか。制度的な問題もありますが、それ以上に 議員間の馴れ合い が深刻です。

札幌市議会では 2025年 3 月、政務活動費の不適正執行で 2 名の議員(坂元・荒井)に対する勧告決議が全会一致で可決されました。会派代表者・経理責任者の管理機能が事実上停止していたことが明らかになっています。

札幌市議会議員68名の仕事ぶり総合採点を見る

海外との比較

議員 1 人あたりの立法力

都市・国 議員数 専属法制スタッフ 議員 1 人あたりの
年間条例提案数
シアトル市議会
(米国)
9 名 40 名以上 22〜44 件
カイザースラウテルン
市議会(独)
50 名前後 各会派にスタッフ 数件〜十数件
札幌市議会
(日本)
68 名 数名(事務局兼務) 0 件(第32期 4年間平均)

シアトルと札幌で、議員 1 人あたりの立法量に 100 倍以上の差 があります。

制度の違い

AMERICA

シアトル市議会

Council-Manager 型。議会が市政運営者(City Manager)を雇用・解雇する権限を持ち、議会が市長部局より上の立場です。

  • 議員 1 人で議案提出可能(共同提出者の要件なし)
  • 議会専属の法制スタッフ 40 名以上
GERMANY

Stadtrat(市議会)

議員は名誉職(無報酬または手当のみ)。各会派に法制スタッフを置き、市民が条例を発議できる仕組みもあります。

  • Bürgerbegehren(市民発議):一定数の署名で議会審議
  • 議会が否決 → Bürgerentscheid(拘束力ある住民投票)に自動移行
  • 過半数賛成+一定投票率で条例として確定
UNITED KINGDOM

イギリス地方議会

多くの議員が兼業(手当のみ)。党派ごとのリサーチャーが議員を補佐。議院内閣制型で議会から市政運営者を選出します。

戦後の動き:アメリカは進化、日本は停滞

GHQ が戦後日本に持ち込んだのはアメリカの地方自治の思想でした。しかし、

つまり 日本は輸入時にすでに骨抜き だったうえに、戦後 70 年で更に「議員=専業給与者」「政策=市長部局製」という非対称な役割分担が固定化しました。

議員報酬の比較

地方議員の位置づけ 年間報酬の目安
日本(札幌市議会)専業約 1,100 万円
アメリカ(中小都市)兼業数十万円〜
ドイツ名誉職手当のみ
イギリス兼業手当のみ

日本は議員に専業の報酬を払っていますが、専業に見合う立法スタッフを与えていません。結果として、議員は政策立案者ではなく、地元支援者対応の専業者になっています。

これから目指す解決策

制度改革(自治体レベル)

1

議会法制局の設置

  • 各自治体の議会に専属の政策法務スタッフを配置
  • 議員 10 名あたり 1〜2 名の法制スタッフを目安
  • 札幌市議会なら 7〜10 名規模

国会には衆議院・参議院あわせて 150 名規模の法制スタッフが議員立法を支えています。地方議会にも同等の支援が必要です。

2

議員提案要件の緩和

  • 現行:議員定数の 12 分の 1(札幌なら 6 名)の賛成者が必要
  • 改革案:議員 2 名で発議可能(提出者+ 1 名)
  • アメリカでは 1 名単独で可能
3

市民発議の自動住民投票化

  • 現行:直接請求で署名を集めても、議会が否決すれば終わり
  • 改革案:議会が否決した場合、拘束力ある住民投票へ自動移行
  • ドイツの Bürgerbegehren / Bürgerentscheid 制度を参考に
4

政務活動費の透明化

  • 領収書のインターネット即時公開(令和 6 年度交付分から開始予定の自治体あり)
  • 過去 5 年分の遡及公開
  • 領収書だけでなく活動報告書(視察先・成果)も公開

議員の質を上げる(人材レベル)

制度を変えても、それを使う人が変わらなければ機能しません。馴れ合いの構造を打破するには、議員自身の意識と能力の向上が不可欠です。

EDUCATION

政治の学校での法制実務教育

  • 条例案の作り方
  • 法制執務の基礎
  • 予算分析の技法
  • 議会質問の組み立て方
CROSS-PARTY

超党派の政策研究会

会派の壁を越えて条例案を練る場。市民・専門家も交えたオープンな議論を行います。

VISIBILITY

議員評価の可視化

  • 代表質問登壇回数
  • 委員会発言の質
  • 議員提案条例の本数
  • 政務活動費の使途透明性

これらを有権者が一覧できる「議員の見える化」プラットフォームの整備が必要です。

有権者の側から変える

投票時のチェックポイント

候補者を選ぶときに見るべき点を整理します。

確認項目 良い候補者の特徴
議員提案条例の実績過去任期で 1 本以上の政策条例を提案している
委員会発言の質議事録で具体的な政策提案をしている
政務活動費の使途公開個人サイトで領収書まで自主公開している
市民との対話月 1 回以上の市政報告会・タウンミーティング開催
馴れ合いの拒否与党会派でも独自提案・修正案を出している

議員への要求

選挙のときだけでなく、任期中も継続的に行いましょう。

2027 年統一地方選挙へ

2027年 4 月の統一地方選挙は、戦後 80 年で最大の議会改革のチャンスです。

このページで示した課題は、どれも「制度として不可能」なものではありません。アメリカ・ドイツ・イギリスでは当たり前に行われていることです。

国創プロジェクトからの呼びかけ

足りないのは制度ではなく、議員の質と覚悟。そして、それを選ぶ有権者の目です。

国創プロジェクトは、この 2 点に焦点を当てた政治家育成プログラム(政治の学校・AI政経塾)と、議員の仕事ぶりを可視化するプラットフォーム(kokuso.org)を運営しています。

発行:国創プロジェクト(北海道ニセコ)/ 責任編集:政治家 前原

最終更新:2026年5月23日

関連ページ

出典

  1. 全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査」
  2. 札幌市議会公式「議員提案の政策条例」
    https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/giinteianjorei.html
  3. 札幌市議会「政務活動費」
    https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/seimukatsudouhi.html
  4. 札幌市議会「意見書・決議」
    https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/ikensho.html
  5. Seattle City Council Legislative Process
    https://www.seattle.gov/cityclerk/agendas-and-legislative-resources/legislative-process
  6. Stadt Kaiserslautern – City council and committees
  7. Council of Europe Congress – Local and Regional Democracy in Germany
  8. Wikipedia – Stadtrat, Referendums in Germany
  9. 国立国会図書館「主要国の議会制度」
  10. 地方自治法第 112 条(議員定数の 12 分の 1 以上による発議要件)